伊勢です、

韓国や中国との対立、
北朝鮮のミサイル発射、

私たちはそんな時代に生きているので、
戦争について、軍事力について、
平和についての議論をすることが
多くなりました。

先日訪れた愛知トリエンナーレでも
戦争についてのアート作品が
数多く展示されていました。

それ自体に問題はないのですが、

SNSで流れてくるそれらの議論や
アート作品をみていて、
時々、無性に怖くなることがあります。

もちろん、いつもではないのだけれど。

その個人的に感じる怖さ、
あるいは、違和感の原因について
考えていたのだけれど、

その怖さや違和感はきっと
議論をしている私たちも、
アーティストも、

多くの場合

「戦争体験者ではない事」

が、関係しているのだと思います。

戦争経験者でない、

言い換えればリアルを知らない
私たちが語る議論や、作品は、

時として、何かとても大事なものが
すっぽりと抜け落ちてしまっている
ような気がして、

その気配を感じると、
怖くて、気持ちが悪い
妙な気分になるのだと思います。

体験を伴わない議論や表現は、
どうしても、

簡略化されすぎたり、
一方的になりすぎたりしがちな
気がするのです。

だからと言って、

議論するな、
表現するな

と、いうことではなく、

前提として

「私たちは戦争体験者ではない」

という事を胸にとどめておく事は、
大事な事が抜け落ちてしまわないために、
とても大切な事のように思うのです。

その前提の謙虚さなくして、
議論や表現をすると、

人間にとって本当に大切なことが
ないがしろにされたまま、
本質からどんどんずれていって
しまうように思います。

そんな事を感じているときに、
この本に出会いました。

『お母ちゃんとの約束』

という名のその本は、
まさに、私が探し求めていたものでした。

この本は、満州から引き上げてきた
「いっちゃん」の体験談なのだけれど、

なんの誇張もなく、誠実に、
ただその体験が語られています。

体験者の言葉は、ただ、とつとつと語られていても、
こんなにも尊く胸に響きます。

この本を読んで、
体験者ではない私たちのひとりでも多くが、
大切な事を胸に留めておくことを願います。

そして、ひとりでも多くの人が
この本を手にとってくれることを願います。

小学生でも読めるように
シンプルに短く書かれている本ですので、
ぜひ、読んでいただきたいです。

お母ちゃんとの約束：
https://www.amazon.co.jp/dp/B0744949MR/

読んでいただけたら嬉しいです。

伊勢隆一郎

追伸：私の祖母は満州からの引き上げ組で、
子ども4人をひとりで無事に連れて帰りました。

母やその時ゼロ歳児でした。

祖母は、冬になると寒い満州での
暮らしを話してくれましたが、

大変な思いをした引き上げと
その後の事は、聞いても決して
口にすることはありませんでした。

言葉にできなかったのだと思います。

なので、この本を創ってくださった、
娘さんの望月泉さんと、
辛い過去と向き合い体験を残してくれた
望月郁江さんに心からの感謝を
お伝えしたいと思います。